今の賃金制度を年間型に整える
病院経営を取り巻く課題
医療提供の質や業務量が増えても、収入がそれに比例して増えるとは限らず、病院経営は常に限られた原資の中で運営されています。
最低賃金の影響は特定の職種にとどまらず、院内全体の賃金水準を底上げする要因となり、人件費は構造的に増え続けています。
※「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」(令和7年6月13日閣議決定)において、2020年代までに最低賃金1500円の目標達成は明記されています。
人材確保のために初任給を引き上げざるを得ない状況が続く中で、既存職員との賃金バランスをどう保つかが大きな課題となっています。
看護師、医療技術職、事務職、介護職などの資格に連動した賃金体系のため、部分的な賃上げが全体のバランスを崩しやすい構造になっています。
「賞与の給与化」は病院にとって危険
賞与を月給に組み込むと、「所定内賃金」が上昇し、残業代や深夜割増賃金の単価も自動的に上がります。その結果、人件費が慢性的に膨張する危険性があります。
さらに、賞与を廃止してしまうと、経営が厳しいときに使える人件費調整の選択肢が「給与カット」しかなくなります。給与の削減には職員の同意が必要であり、モチベーション低下や離職率の上昇という副作用も避けられません。
※賞与の給与化とは
従来ボーナスとして年に数回支給していた賞与を、月給に分けて支給する制度のことです。例えば、ソニーグループや大和ハウス工業は冬の賞与を廃止し、その分を月給と夏の賞与に振り分ける制度を導入し、月給を引き上げています。
病院専用モデルとは
年間型賃金制度は、某病院の理事長の「最低賃金が上がり続けても、病院経営が揺らがない賃金制度をつくりたい」という要望から開発が始まりました。その原点を踏まえ、病院の人件費構造に最適化した専用モデルです。
〈病院専用モデル〉は、複雑な職種(資格)ごとの賃金差を維持しながら、最低賃金に揺らがず、病院全体の人件費を俯瞰して設計できる賃金制度です。
制度の考え方
年間を起点に、給与と賞与を一体的に再設計する
❶
まず最初に「年間標準額」を設定します。この年間標準額は原則として固定し、制度運用の軸となる数値です。
昇給や賃金改定は、基本給の増減によって行うのではなく、「年間標準額」を基準として運用します。これにより、年間全体の水準を安定させながら、人件費管理を行うことができます。
❷
一方で、給与と賞与は固定しません。最低賃金の引き上げや初任給水準の変動に応じて、毎年見直し・修正を行います。
設定した「年間標準額」のうち、給与の12ヵ月分を超える部分は賞与として設計します。
年間型賃金制度は「年間は固定軸、給与と賞与は環境変化に合わせて修正する」という考え方により、最低賃金や初任給が変動する環境下でも、賃金制度全体が揺らがない仕組みとなっています。
病院専用モデルの3つの特徴
毎年の最低賃金改定に対して、年間全体でバランス調整が可能。
看護師・医療技術職・事務職・介護職などの賃金水準を年間ベースで整理。
職員の皆様が納得できる説明を前提とした、シンプルな構造。
導入によって期待できる効果
経営側の効果
◽最低賃金の影響を受けずに従来の昇給を維持できる。
◽人件費を安定的に見通しが立てやすくなる。
職員側の効果
◽自分の年収構造が理解できる。
◽賞与への不安・不信感が軽減。
◽将来設計が立てやすくなる。
年間型賃金制度では、昇給や賃金改定を基本給ではなく、「年間標準額」を軸に運用します。そのため、最低賃金が引き上げられても、年間全体のバランスを見ながら、従来の昇給ルールを維持することが可能になります。
また、給与と賞与を年間で設計するため、毎年の人件費の増減を事前に把握しやすくなり、人件費を安定的に見通すことができるようになります。感覚的な判断に頼らない、人件費管理が可能になります。
職員にとっては、自分の賃金が「給与+賞与」ではなく、年間の収入としてどのように構成されているのかが明確になります。
利益分配型の賞与より安定的な賞与設計であるため、将来の年収見通しが立てやすくなり、生活設計やキャリア設計を考えやすい環境につながります。
他制度との違い
◽賞与の調整効果
◽残業単価
◽制度移行時の説明労力
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年間型賃金制度
高い
ほぼ同じ
高い
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年俸制
ない
上がる
高い
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賞与の給与化
低い
やや上がる
低い
賃金制度の見直しでは、「年俸制」や「賞与の給与化」が選択肢に挙がることがありますが、病院経営の実態を踏まえるといずれも運用面で課題が残ります。「年俸制」は、賞与による調整ができず人件費の柔軟性に欠けます。「賞与の給与化」は、月例賃金が上がることで残業単価が上昇し結果として人件費全体が膨らみやすくなります。
「年間型賃金制度」は、給与と賞与を一体的に年間起点で設計するため、調整効果が高く、残業単価もほぼ現行水準を維持できます。
制度移行時に説明は必要ですが、「変更前と変更後の年間収入は同じ」であるため、導入後の混乱が少なく長期運用に最も適した制度といえます。
「経営の安定」と「働く安心」の両立
院長先生には、人件費の悩みから解放され、医療に専念できる環境を。
職員の皆さまには、年間での収入に見通しがつき、安心の生活設計を。
「年間型賃金制度」は、経営と現場の“安心”を 支え、透明性のある制度が病院全体に信頼と安定をもたらします。
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