持続可能な賃金制度とは
迫りくる最低賃金引き上げと病院経営の危機
現在、最低賃金は異次元とも言えるペースで上昇を続けており、多くの病院で人件費の増加が深刻な経営課題となっています。
このような状況の中、「賞与の給与化」という選択肢が浮上するかもしれませんが、これは非常に大きなリスクをはらむ対応です。
なぜなら、病院経営は一般企業とは制度や構造が異なるため、安易な模倣は重大な副作用をもたらすからです。
※賞与の給与化とは
従来ボーナスとして年に数回支給していた賞与を、月給に分けて支給する制度のことです。例えば、ソニーグループは2025年から冬の賞与を廃止し、その分を月給と夏の賞与に振り分ける制度を導入し、月給を引き上げています。
「賞与の給与化」は病院にとって危険
賞与を月給に組み込むと、「所定内賃金」が上昇し、残業代や深夜割増賃金の単価も自動的に上がります。その結果、人件費が慢性的に膨張する危険性があります。
さらに、賞与を廃止してしまうと、経営が厳しいときに使える人件費調整の選択肢が「給与カット」しかなくなります。給与の削減には職員の同意が必要であり、モチベーション低下や離職率の上昇という副作用も避けられません。
病院のための「年収バランス賃金」
リスクを回避しつつ、人件費を持続的にコントロールできる制度「年収バランス賃金」とは
≪ 制度の特徴 ≫
• 年収を起点に、給与・賞与・昇給制度を設計
• 給与と賞与を“別の報酬”ではなく“年収の構成要素”として統合設計
• 診療報酬が据え置きでも、人件費予算の中で最低賃金対策が可能
年収バランス賃金は、ただの給与制度の変更ではありません。これまでにない視点から、病院経営の現場で生まれた「病院に特化した」人件費設計モデルです。
「年収バランス賃金」が生まれた背景
―― ある日、福岡県内の病院院長からこう言われました。
「最低賃金の対策、ベースアップ以外の方法で職員に不利にならないように考えてくれないか?」
その一言が、「年収バランス賃金」という新しい賃金設計の出発点となりました。
「できないは恥」―― 私たちの仕事哲学
いただいた要望には必ず応える。どんなに困難でも必ず実現方法を探し出す。それが私たち社労士としての誇りです。
私自身、社労士として20年間のキャリアの中でもこれほどの難題を相談されたことはなく、まさに寝ても覚めてもいただいた宿題に向き合うことになりました。
三つの「壁」を乗り越える思考の旅
最低賃金法を確実にクリアしなければなりません。法的に正しくなければ、どれだけ現場に合っていても実現は不可能です。
職員全員を一律に処遇すると、不必要な人件費の膨張につながります。必要なところに、必要な分だけ人件費を配分する「調整設計」が求められました。
制度がいくら優れていても、現場の職員が納得しなければ導入はできません。
「不利益を生まない設計」でなければならない――。これは譲れない前提条件でした。
病院経営に特化した賃金設計モデル
病院経営は“売上を自分で決められない”という特殊性
一般企業と異なり「売上を自らコントロールできない」という宿命を病院は抱えています。診療報酬に大幅な引き上げがない一方で、最低賃金だけは過去最高水準で上がり続けている――。 この「矛盾する経営環境」に真正面から向き合う必要があったのです。
こうした背景の中で生まれたのが、病院経営に特化した賃金設計モデル「年収バランス賃金」 です。
これは単なる新制度ではありません。3つの壁を超えて、現場と法律と経営をつなぐ「持続可能な人件費モデル」です。病院経営の“これから”を支える新たな選択肢です。
院長にも、職員にも、安心を
院長先生には、人件費の悩みから解放され、医療に専念できる環境を。
職員の皆さまには、年収の見通しが明確になり、安心の生活設計を。
「年収バランス賃金」は、経営と現場の“安心”を 支え、透明性のある制度が病院全体に信頼と安定をもたらします。